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ある詩人からの手紙

遠いような記憶がある。じたばたとあがいた詩人がいた。僕は彼を詩人とは認めず、うるさいハエのような人物と見えた。長い年月が流れた。それは一瞬であった。彼の詩集はぼくの本棚にある。誓いもたてず、のさばった詩句。人間通してあるまじき行為と僕は感じていた。だが閃光がひらめいた。地平があるように日はまた昇るのだ。

彼は一足先に黄泉の国に旅立った。そのようにあった。それは事実か? 僕には理解不能だ。僕の手の届かないところにいるのは間違いはない。

ノイローゼのように彼は書き散らした。まるで安売りのように自身をさらけ出した。僕にはその彼の行為を理解できなかったのだ。彼を常識の監獄に押しとどめたのだ。彼はそうであっても彼であった。僕には彼にあらがう姿勢などく、ただただ彼の躍動を無為にやり過ごした。

彼は死んだという。僕は生き残った。この違いはどこにあるのだろうか? 本当に彼が死んだのならレクイエムでも聴いてみようじゃないか。それにいつか彼の本を手にすることだろう。それは彼自身としいてではなく詩人として、詩人の手紙だとして通読することだろう。

by ningenno-kuzu | 2018-03-13 10:42 | 藝術の光と影 | Comments(0)

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