金龍閣という中華料理屋でこの間、夏の慰労会が開かれた。フルコースでぼくたちは中華料理を、7Fのごく景気のよいところで箸を使っていた。ビールも飲んだしひごろ眼にすることのないごちそうにありついた。そうしてけっこうお腹もふくらんだ頃、ひらひらと窓越しに雪のようなものが舞いだした。ガタッ、ガタッという音もした。酔っ払っているみんなは、雪が降っている、などと口々に冗談を飛ばしたものだ。お酒も入っているものだから、みんなめずらしがって、窓越しにひらひらまう雪ともつかぬ白い物体に興味をもったりもした。ぼくはてっきり工事でもやっていると思った。他の誰もが看板でも削っているのではないか、といった。そうこういっている内に、雪も降りやんで、話題も次から次へと移って行った。
夏に降った雪のことなどとっくに忘れ去っていた。―後日、中華料理屋に働く者がやってきてこういった。昨日、飛び降り自殺があった。昨日のヒラヒラ待っていたのは実は、飛び降りた者の口から吹き出した泡だったのだと。みんなもそういったし、ガラスの破片かな、という人もいた。自殺者は椅子で、窓ガラスを破って飛び降りたのだという。新聞にもそのことが書かれていた。その人は男性で結婚したばかりだという。気分が悪いからといって会社を早退して、その帰る途中に飛び降りたらしい。
こういった物も、創作ノートにはある。