以前ブログに載せた詩だ。再度掲載する。「灰の降る午後」えんより転載。

灰の降る午後、ぼくは凍りついた身体を少し動かしてみた。するとどこからか、ギシギシと軋む音が聞こえた。ぼくの手足に、少しずつひびが入ったのだ。ぼくの手がもげ、ぼくの足が向こうの方に歩きだした。
 ぼくは待ってほしい、と言った。遠くに行かないでくれ、と言った。けれど口は、ぼくからポロリとはずれて、待ってくれ、遠くに行かないでくれと言って、ぼくから離れて行った。
 ぼくには灰の降るのだけがわかった。なぜわかったか、ぼくにはさっぱりわからなかった。灰は蝶のように舞い、ぼくの眼の玉の間をすり抜けて行った。ずいぶん変わった灰だった。
 ああ、そうだ、とぼくは思った。これはぼくの灰だ、と思った。ぼくは今、焼かれているのだ。そんなことにも気づかずにいたなんて、ぼくはどうかしている、と思った。
 ぼくはいつの間にか煙になって、街の上に浮かんでいた。風に吹かれて、小さな灰が、地図の上に降りそそいでいた。
 新しい国が築かれて、そこに生き物が生れようとしていた。ぼくの体が国になって、ぼくの体から芽をふいた。その内、おとなりどうし、あいさつをかわすようになるのか、とも思った。けれどもそれまでには、ずいぶんかかるだろう。
 そこでぼくはこうつぶやいた。好きなようにやってくれ。ぼくはかまわないから。
by ningenno-kuzu | 2013-01-08 18:48 | エッセー | Comments(0)

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