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『天使レヴィン』 バーナード・マラマッド著

ずいぶん前だ。地方局でまだアフタヌーンシアターがあった頃の話だ。テレビでまだ昼間に映画をしていた時代だ。現在はどうかは知らない。

そこである映画を観た。ぼくも暢気にしていたのだ。本当なら会社で延々と働く年齢であったが、ぼくはそうはせずバイトをしたり、働きもしたがあまり長続きはしなかった。ぼくはしたいことをしてしたくないことをしなかったためだ。いってみれば自分を中心据え置き、自分の思うがままに生きていた。その生き方が正しいかもしくは間違っているか現時点での結論はただしかったと云える。それは何なりと恵まれていたからであり、すべての人に共通に言い得ることではない。

ぼくは時間はたくさんあった。会社勤めの同年齢からしたら、10倍も20倍も時間があった。その時間は思索や読書や映画やテレビや音楽、美術館などにその大半をさいた。その時であったのがバーナード・マラマッドである。ぼくは映画から出会い原作はあとになってから読んだ。映画のタイトルは実は覚えていない。後年、友人に観た映画の話をして、この作品は誰だろうと訪ねたら「バーナード・マラマッドじゃない?」と言われたので、彼の短編集を買ったという経緯がある。

彼の短編集はその当時、容易に見つけることができた。その中の「天使レヴィン」が観た映画の作品であることは既にわかっていた。マラマッドはユダヤ系アメリカ人の作家だった。それも天使…を思わせた。あらすじを紹介しておこう。本来なら筋は読んで楽しむもので知っていたら面白くないものだ。だがこの作品の場合、ここで取り上げてはいるが、実際に読むことはないだろうと思われるので、ちょっとした形にしていたら偶然に立ち寄る人がいる程度の想いで書き込もう。

筋といってもかなり断片的だ。記憶というのは勝手なものだ。都合のいいところだけ覚えている。しかしそれを嘆いても仕方がないだろう。というわけで断片を。

年老いた人が主人公となる。おじいさんだ。おじいさんはまだ元気な頃、店をして生計をたてていた。妻は病気で寝込んでいた。彼らの終末を思わせるシュチュエーションだった。彼はなんとかならないかヨタヨタした足でお役所に行って救済を申し入れた。もちろんお役所はそんな老人を無視する。寝たきりの妻を抱え、自分もヨボヨボの身である。そこには救いはなかった。

ある時、誰かが家にいた。いや来たのかもしれない。どなたさんで? 老人は言った。わたしは天使です。そう言ったのは黒人だった。彼ははてと思った。てんし? 天使はすくいなさる。そうとも思った。老人は幾ばくかの会話をその自分を天使という男としたのだ。よく聞けばその男はユダヤ人だという。黒人でユダヤ人。その人が果たして天使だろうか? 老人はそう考えもした。どこそこにいると言って天使は去った。

老人は考え込んだ。救いようのないこの窮状、誰も相手にはしてくれない。そうだ、天使のもとにゆこう! 老人は訊いた住所に出かけていった。だが名前を言ってもよからぬ噂ばかり返って来た。この人はあまり良い天使だとは思えなかった。ある人が言った酒場へと天使を探しに行った。あいつならどこそこの酒場にいるよ、と言われたからだ。

天使はいた。飲んだくれて酒場にいた。おじいさんは会いに来ましたといった。

云々。これから先は教えません。またぼくの誤謬もわかりません。どんな結末が待っているか知りたい人は数年後でも構いませんから、この作品を読んでください。この作品はちょっとした人間の心理を解明しています。そこに焦点を合わせています。マラマッド自身、作品には貧しい人を多く取り上げる傾向にあります。映画も小説も良かった、とぼくのシンプルな感想でしめておきましょう。

by ningenno-kuzu | 2015-10-18 16:51 | Books | Comments(0)

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